研究概要 |
1.MgおよびMg-Li合金における2次錐面すべりによる降伏応力のせん断負荷方位依存性の研究 (1)Mg単結晶のa軸引張では,77〜293Kで2次錐面すべりが活動し,その降伏応力は異常温度依存性を示す.これに対し,せん断応力の向きが逆になるc軸引張では,2次錐面すべりではなく{1012}双晶変形により降伏し,その変形開始応力は約15MPaと低い値であった. (2)Mg-3.5〜13.8at.%Li合金単結晶を作成し,a軸引張を行った結果,いずれも2次錐面すベりで降伏し,その降伏応力は異常温度依存性を示した.またLi濃度の増加にともない,降伏応力が低下した.Li添加によりすべり帯内の歪量が増加することから,その原因として,転位の運動性が変化していると推察される. 2.Tiにおける1次錐面すべりの降伏応力の逆温度依存性の研究 Ti単結晶をa軸引張において,77〜293Kでは柱面すべりが活動した.これに対してc軸引張では,試料の酸素濃度により変形様式が異なった.酸素1000at.ppm程度では{1012}双晶が生じるが,4000at.ppm程度では1次錐面すべりにより降伏し,その降伏応力は前者より低くり,1次錐面すべりの降伏応力は負の酸素濃度依存性を持つことが推察される. 3.EAMポテンシャルを用いた分子動力学シミュレーションによる(c+a)転位芯構造の研究 (1)BeおよびMgの(c+a)刃状転位は,低温では完全転位であり,せん断歪をにより,1/2(c+a)部分転位に分解してすべり運動した.温度上昇により底面に拡張した芯構造に変化し,不動転位となった.すなわち転位芯は温度により変化し,これにより転位が熱活性化により不動化するモデルが提案された.これに対しTiでは2次錐面上では運動することはなく,実験観察結果と一致した. (2)Be,Ti,Mgの(c+a)らせん転位は,0Kでは2つの1次錐面に広がった非対称な芯構造であった.温度上昇に伴い,2次錐面と1次錐面の2つに拡張した構造に変化した.せん断歪を加えると,らせん転位は2つの錐面の間を交差すべりしながら運動し,これにより2次錐面すべりによるすべり帯の拡幅過程を示すことが出来た.
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