研究概要 |
現有設備「赤外線加熱単結晶製造装置」による浮遊帯精製法は,試料を縦方向に置き,ハロゲンランプからの光を集光し,試料の一部を溶解し,そしてその溶融部を移動さす方法である。この方法は試料を他の物質と接触させずに溶解することができるので,溶解中に不純物が混入しない点にメリットがある。しかし,この方法で最も困難なことは,溶融部分を適当な長さに制御する点にある。つまり,溶融部の長さが短か過ぎると固まってしまい,長すぎると溶け落ちてしまう。したがって,本年度はその溶融条件を得るために,純度99.999%のアルミニウムを用いて浮遊帯精製を試みた。その結果,溶融部約7mmで90mmの範囲を溶解処理できるようになり,これを12回繰り返すことに成功した。そして,室温での電気抵抗と液体ヘリウム温度での電気抵抗の比(抵抗比:RRR)が約26000である試料が得られた。この抵抗比は純度約99.9999%に相当するものであり,現在のところ,純度を1桁上げることに成功している。また,浮遊帯精製した部分は単結晶となることも確認した。 また,純度99%,99.9%,99.99%,99.999%アルミニウムと,これまでに得ている99.9999%と99.99999%アルミニウムの濃塩酸による腐食挙動を調べた。その結果,99%アルミニウムは2時間程度で消滅するが,99.9%アルミニウムは48時間後でも質量減少割合が25%程度であり,99%と99.9%の試料の間には非常に大きな違いがあること,また,質量減少の割合は99.999%までは純度に依存するが,それ以上の純度のアルミニウムは48時間後でも数%で大体同じ程度であることを見出した。さらに,表面の酸化膜が腐食の挙動に大きく影響し,その存在による腐食の進行や腐食の起点の違いが判明した。
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