研究概要 |
本研究は,ハイパワー励振状態での圧電セラミックスの"振動による内部損失"と"誘電体損失"を分離して,しかも同時に,コンピュータ制御による自動測定装置により測定し,圧電セラミックスの組成,作製方法による特性の違いを短時間のうちに評価できるシステムを開発しようとするものである. 申請者はこれまでに,振動による内部損失の自動測定システムを開発している.この装置をさらにシステム・アップして,超音波機能材料である圧電セラミックスの"振動による内部損失"だけでなく,"誘電体損失"も同時に測定できる自動測定装置の実現を目指す. 初年度である平成10年度は,"振動による内部損失"と"誘電体損失"を分離して測定する測定システムの作製を行った.まず,新しい優れた等価回路の提案を行った.すなわちハイパワー励振時に"振動による内部損失"と"誘電体損失"を分離して測定するのに適している理由から,超音波機能デバイスの等価回路として,全く新しく最適な等価回路の提案を行った.すなわち,従来のLCR共振回路と並列容量Cdからなる回路に全体に直列接続的に誘電体損失抵抗が存在する回路である. この等価回路を基に両損失を分離して測定する測定システムを作製する.研究実施項目と内容を箇条書きにより以下に記す. (1) 等価回路の導出:等価回路定数の損失位相角を考慮に入れて新しい等価回路の導出を行った. (2) 次いで,分離測定のための電子回路の設計と試作を行って動作確認を行った. (3) 両損失同時測定のための自動測定ソフトウェアを作製した. (4) 高電圧発生用の圧電トランスにこの新しい等価回路を適用して効率最大となる周波数を計算機シュミレーション結果と実験とを比較検討を行ったところ,効率最大となる周波数が両者間で良く一致しており,等価回路の妥当性が明らかとされた.
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