研究概要 |
緩和型強誘電体は、誘電率の温度変化においてキュリー点近傍でブロードなピークを示す。一般に緩和型強誘電体はペロブスカイト構造を有するがPb(Mg_<1/3>Nb_<2/3>)O_3 (PMN), Pb(Ni_<1/3>Nb_<2/3>)O_3 (PNN), Pb(Zn_<1/3>Nb_<2/3>)O_3 (PZN)の様にペロブスカイト構造の安定性が低く単一相を得るのが非常に困難な化合物が多い。また、緩和型強誘電体に特有の誘電率の温度依存性は、ペロブスカイト構造のBサイトの陽イオン分布の規則化度により決まる。 本研究では、様々な陽イオンに配位して複合体を形成するポリエチレングリコール(PEG)に注目した。ペロブスカイト構造のBサイトを構成する陽イオンとPEGの複合体を調製し焼成することでPEG-陽イオン複合体中の陽イオン分布を反映した酸化物を調製した。それにAサイトを構成する陽イオンからなる酸化物を混合した後、焼成することでPMNおよびPNNの調製を行った。そして、PEG-陽イオン複合体の構造とペロブスカイト相の生成しやすさ及びBサイトの陽イオン分布の規則化度の関係について明らかにした。 PEGを用いる方法でPMNを調製した場合、原料酸化物粉体の混合と焼成による乾式法を用いた場合より300K以上低い温度でペロブスカイト構造の単一相得ることができた。さらにPEG-陽イオン複合体のPEG分子量の増加により、LaドープPMNの超構造の生成が促進された。これらのPMNの誘電率の温度依存性は、PEG分子量に依存した。また、PNNは、通常の乾式法では安定なペロブスカイト構造を有するBaTiO_3やPbTiO_3の数mol%添加ではペロブスカイト構造単一相を得ることができない。しかし、本法を用いることによってBaTiO_3を1mol%添加し1373K,1hの焼成で単一相を得ることができた。
|