研究概要 |
本研究は、チタン酸鉛を基体とするペロブスカイト型強誘電体について、90度ドメインスイッチングを支配する結晶化学的因子を明らかにすることを目的としている。 本年度は、チタン酸鉛の鉛の一部をカルシウム、ストロンチウム、バリウムで置換固溶することで、結晶格子のテトラゴナリティーを1.01,1.03と揃えた焼結体を作製して、その分極反転特性と誘電性いついて検討した。まず、緻密な焼結体を得るために作製プロセスを確立した。分極反転特性については、テトラゴナリティーが増加するほど抗電界が増加したが、残留分極量はテトラゴナリティーだけでは説明できず、特にストロンチウムを固溶した試料で非常に大きな値を示すことを発見した。また、誘電性に関しては、テトラゴナリティーの低下とともに誘電率は減少した。残留分極量の異常な挙動の原因を明らかにするために、リートベルト法を用いて結晶構造解析を行った。その結果、ストロンチウム固溶体では、強誘電性の起源となる8面体配位のチタンの位置が、理想位置から大きくずれていることを明らかにした。来年度は、このストロンチウム固溶体の薄膜化を行い、90度ドメインスイッチングについて検討する予定である。
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