少数のゼオライトが、マイクロ波照射によって高温まで加熱されうる事が約10年前に発見された。その後関連する研究が幾つか行われたが、現象を観察する域を脱せず、加熱の機構は未だ解明されていない。本研究では、ゼオライト中のカチオン分布が比較的良く分かっているA型ゼオライトを用いて、マイクロ波(2.45GHz)加熱特性、カチオン分布、誘電特性の関係を調べ、マイクロ波加熱特性がどんな因子に依存しているのかを考察した。 用いたゼオライトの組成は3種類で、その化学組成は次式で与えられる。Na_<12>(AlO_2)_<12>(SiO_2)_<12>、Na_<4.5>K_<7.5>(AlO_2)_<12>(SiO_2)_<12>、Na_3Ca_<4.5>(AlO_2)_<12>(SiO_2)_<12>。これらを以後それぞれ、4A、3A、5Aと呼ぶ。3種のゼオライト共、マイクロ波加熱特性は吸着水の量に依存した。一部例外はあったものの、吸着水量を増やすと加熱のされ易さは向上した。熱分析の結果、吸着水は400〜450℃までに脱着する。吸着水が存在しない条件下でもマイクロ波による加熱温度が3種のゼオライトで異なった事から、加熱特性はカチオン組成に依存する事が分かる。加熱のされ易さは4A>3A>5Aの順である事が分かった。 既に我々によって測定されている4Aと5Aの誘電特性と、提案されている近似式を用いて、2.45GHzの電磁波吸収効率を温度の関数として求めたところ、4A≫5Aとなりマイクロ波加熱特性を旨く説明できた。そこで新たに3Aについて誘電特性を測定し計算で比べたところ、4A>3A≫5Aとなり、加熱特性を旨く説明できた。誘電特性はカチオン分布に強く依存している事を既に我々は報告している。 以上の事から、吸着水以外にも、マイクロ波吸収にはカチオン分布が強く影響していると言える。 吸収効率は室温〜400℃くらいまでの誘電特性から計算で推定でき、高温でのマイクロ波加熱挙動を予測できる事が分かった。
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