マイクロ波CVD法によりn型Si基板上にダイヤモンド薄膜を作成し、フィールドエミッション特性を測定した。ダイヤモンド核の発生はC_2H_4-H_2系の炭化およびバイアス処理で行い、成長は(CH_3)_2CO-H_2系で行った。窒素ドープ源として(C_2H_5)_2NHを添加した。 1. 表面形態及び膜質 析出膜は(100)配向の多結晶膜であった。(C_2H_5)_2NHドープ量が0〜500ppmでは結晶粒のファセットが明確であったが、1000ppm以上ではファセットが崩れる傾向にあった。ラマン分光分析では、ドープ量がO〜2000ppmにおいてダイヤモンドとグラファイトのピークがみられたが、5000ppmではダイヤモンドの明瞭なピークはみられなかった。 2. 電界電子放出特性 電界電子放出特性は膜-電極間距離20μmで測定した。電子放出は300〜2000ppmドープ膜において確認された。表面形態と膜質は、ノンドープ膜と500ppmドープ膜でほぼ同じであったが、ノンドープ膜では電子放出が確認されないのに対し、500ppmドープ膜では4.lV/μmから電子放出がおこり、大きなエミッション電流が観測された。一方、表面形態、膜質が完全に崩れた5000ppmドープ膜においては電子放出が確認されなかった。 以上より、(C_2H_5)_2NHドープは電界電子放出特性の向上に有効であるが、膜質を低下させる傾向があり、ドープ量に最適値が存在することがわかる。今後は、窒素ドープ条件下での膜質向上が課題である。
|