本研究の目的は、スケーリングという基礎物理学の概念を、超イオン導電ガラスの設計及び物性予測に使えるかどうかを明らかにすることである。この目的に関して、ここ1年程の間に得られた新たな知見は以下のとおりである。 1 網目構造をつくっているガラスに塩をドープすると、網目構造は膨張し、その膨張率はガラスの平均的な電気陰性度でスケールされる(昨年度の報告書)。今年度は、このスケーリングの背景にある物理的起源を明らかにする研究を行った。最終的な結論にはまだ至っていないが、大体次のような理由による。網目構造は塩によって切断されるため膨張する。切断される箇所とその数は化学的制約を受ける(ボンド数や結合の強さ)。この制約が塩のドーピングによる網目構造の膨張率とガラスの平均的な電気陰性度を結び付ける。 2 上記の研究を行っている過程において、ガラスの平均的電気陰性度、膨張率、イオン伝導度、中距離構造といった物理量が全て関連していることを見い出した。このことは、複雑な系である超イオン導電ガラスの物性予測がある程度可能であることを示唆するものである。 上で述べた研究の成果は、日本物理学会(広島、1999年3月)、(岩手、1999年9月)、日本物理学会九州支部例会(長崎、1999年11月)、12^<th>International Conference on Solid State Ionics(Greece、1999年6月)で発表した。
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