本研究の目的は、スケーリングという基礎物理学の概念を、超イオン導電ガラスの設計及び物性予測に使えるかどうかを明らかにすることである。この目的に対して、ここ2年程の間に得られた新たな知見は以下のとおりである。 網目構造をつくっているガラスに塩をドープすると、網目構造は膨張するが、その膨張率はガラスの平均的な電気陰性度でスケールできることを見い出した。この結果は、ドーピングによる網目構造の変化がガラスの種類に関係なく、ガラスの平均的な電気陰性度の変化の度合いによって支配されるという興味深い事実を示している。 ガラス中における酸化物網目の中距離構造の相関距離が長くなるに伴い、イオン伝導度が大きくなることを見い出した。 上記の研究を行っている過程において、ガラスの平均的電気陰性度、膨張率、イオン伝導度、中距離構造といった物理量が互いに関連し合っていることを見い出した。このことは、複雑な系である超イオン導電ガラスの物性予測がある程度可能であることを示唆するものである。 その他の研究として、液体銀カルコゲナイドが示す異常な電子物性に対するモデルの提案、超イオン導電物質AgIの有効価電子数の温度依存性の計算、銅ハライドの局在有効電荷と原子間の力の定数の温度・圧力依存性、Ag_x(GeSe_3)_<1-x>ガラスのイオン伝導度の測定等の研究を行った。
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