研究概要 |
本研究の目的は,TiB_2等の遷移金属ボライドやLaCoO_3のようなペロブスカイト型酸化物の高温電気電導率結晶を高温動作の熱電発電用電極材料として応用するための材料学的検討を行うことにある.今年度は主としてLaCoO_3セラミックス薄膜の合成方法と電気伝導特性に関して検討した.また,熱電材料との接合特性を考慮するため,CoSb_3熱電半導体の合成に関する実験を行った.以下に,本年度の研究成果を簡条書きに記す. 1.LaCoO_3薄膜の合成:La_2O_3およびCoO混合圧粉体をターゲットとしてイオンビームスパッタ法によりLaCoO_3薄膜を合成した.製膜後のLa/Co比はターゲット組成から若干のずれを生じ,ターゲットのLa/Co比を52/48としたとき,製膜後にLa/Co比1/1の薄膜が得られた.また製膜後の膜は非晶質であった.合成した膜に大気中で1143K,6時間の熱処理を加えることにより,最も結晶性の良いLaCoO_3セラミックス薄膜が得られた. 2.LaCoO_3薄膜の電気伝導特性:室温におけるLaCoO_3薄膜の電気抵抗率は,1.35x10^2Ωmとなり,La/Co比が1/1の試料が最も小さい抵抗率を示した.また,測定したゼーベック係数は正の値をもちキャリアが正孔であることがわかった.また電気抵抗率の温度依存性を測定したところ,低温では明らかに半導体的な挙動を示したが,550Kより高温域で金属-絶縁体転移を示唆するゆるやかな抵抗率の温度変化が観察され,バルク材と同様の温度依存性を持つことが明らかになった.また900Kでの10^<-5>Ωm台の抵抗率を示し,バルク材あるいは金属材料に匹敵する抵抗率を持つことを示した. 3.CoSb_3熱電半導体の合成:多層膜を利用した固相反応法により,CoSb_3薄膜を合成することに成功した.
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