研究概要 |
硝酸セリウム、硝酸イットリウム、硝酸ネオジム、塩化タンタルの水溶液などにアンモニア水などを混合して沈殿を作り、無添加CeO_2,Y添加CeO_2,Nd添加CeO_2,Ta添加CeO_2の粉末を合成した。約800℃でか焼後、一部の試料については500℃,90MPaで水熱処理し、錠剤に成形後、1100〜1420℃で焼結した。これらの試料について、粉末X線回折による同定と格子定数測定、TEMによる観察と粒径測定、アルキメデス法などによる密度測定を行った。特に高密度焼結体が得られた試料については表面を研磨した後、酸素同位体(^<18>O)を用いた酸素拡散実験を行い、四重極質量分析計で気相分析するか、SIMSで固体中の^<18>O分布を測定して酸素拡散係数を決定した。 Nd添加CeO_2では沈殿生成の段階でNdがCeO_2に固溶しており、500℃の水熱処理で結晶性が良くなった。粉末の大きさと処理液のpHの関係を調べたところ、無添加CeO_2ではpH=11、Nd添加CeO_2ではpH=13.5のところで水熱処理中の結晶成長促進されていた。CeO_2にNdを添加するとべガード則に従って格子定数は大きくなり、固溶限界は10%以上であることが判明した。Ta添加CeO_2も格子定数が大きくなる傾向にあったが、変化量が少なくて1300℃で約3%であったが、他の温度では厳密に固溶限界を決定するのが困難であった。 本研究で測定した無添加CeO_2の酸素拡散係数は文献に報告されている値(Floyd 1973)より小さく、活性化エネルギーは大きかった。他の蛍石型構造の酸化物中の酸素拡散係数と比較することにより本研究の酸素拡散係数の方が無添加CeO_2のものとして妥当であると結論される。また、Nd添加CeO_2中の酸素拡散係数は同じ添加量のY添加CeO_2中のものより大きく、電気伝導度から予測される値にほぼ近いものであった。
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