本年度は、ナノフィラー制御によるマトリックス樹脂の構造形成と力学特性変化を見極めることを目的として、下記のような成果が得られた。 (1) ナノレベルでの構造制御が可能な熱可塑性樹脂としてポリ塩化ビニル樹脂が有効である。すなわち、他の非晶性高分子と同等な構造と信じられていた高度なゲル化レベルにおいてもなお、30nmレベルの粒子が一体となる構造を発見した。 (2) 界面強度の制御はナノ無機-有機複合体の場合、重要となる。従来は、無機粒子の表面改質あるいは高分子末端への官能基付与が常套手段であった。今回、界面反応性を基礎的に検討するために、高分子側の分子量分布に着目した。その結果、分子量分布を狭くしたところ、従来にない界面接着強度が得られた。すなわち、界面強度は、界面での反応性均一化することが重要であり、また、たとえフィラーと高分子との反応がよくとも、その周りの高分子の分子量が母材と一定の絡み合いを持つレベルになければならないことが明らかとなった。 (3) 多相系高分子の界面強度は、それらの発現機構と十分関与することをABS樹脂を用いることにより明らかにした。
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