研究概要 |
芯鞘型繊維の作製を経由して三次元的な構造を有する連続繊維で強化された複合材料を作製することを目的として研究を行った.具体的には,まず芯成分に熱可塑性液晶ポリエステル(TLCP)であるPoly(p-hydroxybenzoicacid-co-2-hydroxy-6-naphthoicacid),鞘部にポリカーボネート(PC)を用いて芯鞘型複合繊維の溶融紡糸を行った.TLCPはPCとの複合により可紡性が向上し,TLCPを単成分で紡糸した場合に比べ高い巻取速度での紡糸が可能となり,同時に複合繊維中のTLCP成分は高い力学特性を示すことを明らかにした.この複合繊維を凹凸金型内に一方向に配列させ,PCのガラス転移点以上,TLCPの融点以下の温度で圧縮成形することによって鞘成分のみを融解・溶着させ,一方向繊維強化複合材料を作製した.複合材料の引張および三点曲げ試験を行った結果,引張弾性率および強度は繊維の力学特性とほぼ同程度であり,溶融紡糸過程で発現する強化繊維の構造・物性が複合材料中でも保持されていることを確認した.さらに,複合繊維を凹凸金型内に直交方向あるいは三方向に配置して複合材料を成形し,その力学特性について検討した.特に三方向強化材では積層理論から予測される通り,弾性率が面内等方性を示す複合材料が得られていることを確認した.さらに、複合繊維を平織りした織物を作製し,この織物を積層した後に圧縮成形して,三次元的に強化繊維が配列した繊維強化複合材料を作製した.このように,芯鞘型複合繊維を複合材料成形に応用することで,材料設計の自由度が高くなり,複雑な構造を有する連続繊維強化複合材料が得られることを実証した.
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