研究概要 |
六方晶マグネシウム合金の,立方晶合金に比べてクリープ延性の低い0.6Tm(Tmは絶対温度で表した融点)から実用上重要な0.4Tm程度の温度における高温変形特性の系統的な情報は,材料学的にまた実用的に重要である。本年度は,研究代表者らが従前より行ってきた研究結果を礎として,0.6Tm近傍での固溶強化型マグネシウム-アルミニウム合金の変形組織の結晶学的特性を調査した。研究代表者らは,この合金系では,クリープ破断延びが合金濃度が高いほど低下することを見いだしているが,延性の低い組成・変形条件は,圧縮クリープで粒界近傍に動的再結晶組織が形成される条件と概ね一致する。動的再結晶組織はクリープ変形応力で結晶粒径が決まり,また動的再結晶粒の数はひずみとともに増加する。この動的再結晶粒の結晶配向を,SEM-EBSP法(OIM法)によって個別粒毎に定め,その空間的分布を検討した。このような動的再結晶組織は,結晶の対称性の低い金属間化合物の高温変形においても見いだされており,本研究で得られた結果と併せて,延性との強い相間が示唆されたので,比較を目的として更にチタンアルミナイドについても類似の解析を行った。結晶の対称性が低いマグネシウム合金およびチタンアルミナイドでは,解析に適する回折面の組合せを新たに定める必要があり,原子間距離の差が小さいが結晶構造の異なる相を識別できる解析条件を実験的に決定した。決定された解析条件で,結晶配向の傾向の異なる動的再結晶粒の識別が可能であること,その配向の特徴,変形に伴う変化を明らかにした。動的再結晶組織と加速クリープ挙動に密接な関係があることが見いだされた。この結果は,動的な組織変化に起因する破断予測への応用が期待される。
|