究極のクリーンエネルギー源である核融合炉用の壁材料として最適な硬質炭素膜を作成する条件を検討するため、ECRプラズマCVD法によりメタンから作製した真空加熱前後の光度、膜構造および組成の変化について検討した結果、以下の重要な結果を得た。 (1)硬質a-C:H膜の熱分解挙動 (a)メタンのみを原料として作成した硬質a-C:H膜を加熱すると水素含有量が少ない硬質炭素膜を作成できるが、加熱後の膜に部分的な剥離が目立ち、保護膜としては適当でない。 (b)原料ガスのメタンにアルゴンを添加すると加熱処理によるクラックや剥離の無い膜を作成できるが、硬度の高い膜では成膜時に膜中に取り込まれたアルゴンの噴出痕を膜表面に作る。 (c)硬度及びヤング率の比較的低い膜ではネットワークの網目サイズが小さすぎないため、アルゴンの放出による硬度及びヤング率の低下も少なく、膜表面の破壊も起こらない。 (d)熱分解フラグメントの放出量は膜厚に比例しており、放出亜ラグメントは膜表面から発生しているのではなく、炭素膜内部から放出される。 (e)炭素膜の作成時にシリコン基板の水素プラズマエッチング処理を行うと、真空加熱による炭素膜の剥離が抑えられるが、膜内からの気体が噴出した痕が残る。 (2)保護膜として適合するa-C:Hの作成条件 今回の検討から膜の作成において重要なことは以下のようである。 (a)基板のスパッタ洗浄処理を行う。 (b)原料ガスとしてアルゴンを添加する。 (c)シリコン基板程度の硬度の膜を作成する。
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