結晶粒を微細化することによって、金属材料の機械的性質は向上することはよく知られている。微細化法の一種であるECAE(Equal-Channel Angular Extrusion またはECAP(Equal-Channel Angular Pressing))法は、通常の多結晶素材に強ひずみを繰り返し導入することができ、高強度の材料を得ることができる。本年度は昨年度に引き続き、A5056アルミニウム合金溶体化処理材を素材(A5056-O材)とし、ECAE法の加工条件を改良することにより、より微結晶化した材料(A5056-ECAE材)を製作し、その引張り試験、および疲労試験を実施し、強度特性についてA5056-O材およびA2024-T3材と比較検討した。得られた成果は以下のとおりである。 1.A5056-ECAE材の引張り強さは442MPaであり、A2024-T3材と同程度であったが、伸びは7%であり、A2024-T3材の半分以下であった。 2.A5056-ECAE材の低サイクル疲労特性は、A5056-O材とA2024-T3材の中間であった。 3.A5056-ECAE材の高サイクル疲労特性は、高応力振幅側ではA5056-O材およびA2024-T3材よりも優れていたが、疲れ限度に関しては有意の差は見られなかった。 4.A5056-ECAE材の疲労亀裂進展速度はA5056-O材およびA2024-T3材の約2倍程度大きかった。 5.A5056-ECAE材において、繰り返し変形に起因すると思われる回復や部分的再結晶が生じた。
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