研究概要 |
1 単層Ni-O膜 NiをターゲットとしてRFスパッタ法によって,Ar+O_2雰囲気中で成膜した.その時,総圧力は一定とし,O_2/(Ar+O_2)比を変化させた.9%を境に低酸素分圧ではNi,高酸素分圧ではNiO膜の単相がそれぞれ得られた.両相が同時に得られるというCo-O系とは異なった振る舞いを示す.NiO膜は磁化率がバルクの値にほぼ等しいが,電気抵抗率はバルクの値と大きく異なる.そこで,Ni膜とNiO膜の熱処理を,それぞれ,ArとAr+O_2雰囲気で行って特性の変化を調べた.Ni膜では,熱処理温度の増加に伴い保磁力は増加する.保磁力の増加は結晶子の大きさの増加に対応し,磁壁の大きさと結晶子の大小関係から磁壁移動が抑制されるためと考えられる.また,強磁性共鳴の測定から,Ni膜の膜垂直方向の異方性磁界が熱処理によって大きく変化することが分かった.また,NiO膜では,格子定数と抵抗率が増加しバルクの値に近づくが,ネール温度の前後での変化が大きいことが見られた.RBSによる酸素分析を行い,酸素量と電気抵抗率,格子定数の関係を明確にした. 2 2層Ni/NiO膜と単層Ni膜 2層Ni/NiO膜と単層Ni膜を作成し,保磁力(Hc),結合磁界(Hex),磁気抵抗効果(Δρ(H//I)/ρ)を測定した結果,2層Ni/NiO膜について次のことがいえる.(1)2層膜では,NiO層の増加に伴い,Hex・Hc・Δρ(H//I)/ρ)は大きくなる.(2)2層膜のHexは,Ni層厚を小さくするのに伴い,大きくなる.(3)NiO層が大きくなる程,Hexが生じるNi層厚が大きくなる.(4)2層膜のHcは,Ni層厚の減少に伴い増加する傾向にある.(5)2層膜のΔρ(H//I)/ρは,Ni層厚が大きい膜ほど大きい.
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