研究概要 |
材料の物理的・機械的特性はそれに内在する点欠陥により強い影響をうける事は良く知られている。本研究ではB2型金属間化合物における点欠陥構造をX線・中性子線回折法に基づき決定し,その形成機構の系統的理解を得る事を目指した。まずB2FeAl合金に対する中性子線・X線回折実験の結果,NiAl,CoAlで既に我々によって報告されたのと同様に,4種の点欠陥が混在するhybrid状態が確認された。更に昇温過程における点欠陥挙動に,(1)熱空孔のランダム配置(RVD),および(2)不正原子の正規siteへの戻り(ASAR,)の傾向がある事を見出した。これらはいずれも従来の点欠陥モデルの枠組では理解出来ないものである。 以上の結果を踏まえ,B2型合金の点欠陥形成機構をBragg-Williams法に基づき熱統計的に考察した。その際,基底状態における構造欠陥は不正原子であるとし、また昇温に伴う欠陥状態はRDV過程を基本としASAR過程を含む原子のジャンプ過程が一部継続して起こるhybrid状態として表現出来るとした。NiAl,FeAlに対する計算結果は、Ni(Fe)-空孔の優先的形成,不正Al原子の存在,またFeAl合金におけるRDV的挙動や不正原子の戻り現象など実測の傾向を良く再現する事ができた。 またAuCd合金では,B2相における空孔濃度の組成変化を求めた。空孔は49.5%Cd以上で増加し,51.5%Cdでは1%に達する事が分かり,FeAlと同じhybrid的欠陥挙動をとることが予測される。更に,ゴム弾性挙動の実現などマルテンサイト時効効果に対する点欠陥(空孔)の役割を追求するため,粉末X線回折法により格子定数(空孔の移動)および積分強度比(長範囲規則度)の時効変化を系統的に調べている。49.8%Cdの徐冷・急冷試料の変化ではマルテンサイト時効で両者の変化は認められず空孔の長距離移動および張範囲規則度の変化がない事が分かった。この成果は既に発表済である。
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