天然ガスの主成分であるメタンを直接に使用可能な固体酸化物燃料電池(SOFC)の開発を目的として、メタンのアノード酸化反応に対して高活性を示す電極物質の探索を行った。層状結晶構造をもつ3d-4d複合遷移金属酸化物PdCoO_2と岩塩型結晶構造をもつ3d複合遷移金属酸化物Ni_<0.5>Co_<0.5>Oに着目した。PdCoO_2については、メタン酸化反応活性を高める新しい粒子合成法確立と燃料電池特性におよぼすPdCoO_2粒子分散化効果の検討を行った。Ni_<0.5>Co_<0.5>Oについては、メタン酸化反応活性化機構を反応に関与する成分の物質収支から検討した。Pd-Co塩化物溶液から共沈法にて作製したPdCoO_2粒子は、結晶化度が高く粒子サイズの均一性に優れることを見いだした。このPdCoO_2粒子を多孔質金属基質に分散した燃料極を安定化ジルコニア固体電解質と組み合わせたセルは、従来の合成法で作製したPdCoO_2粒子を用いた場合よりも燃料電池性能が向上した。アノード分極抵抗の測定結果から、PdCoO_2粒子によるメタン改質反応の促進効果が電極反応に関与する水素および一酸化炭素の生成率を向上させ、分極抵抗の低下をもたらすものと考察した。Ni_<0.5>Co_<0.5>O粒子の燃料極への分散はメタン使用に対する固体酸化物燃料電池の性能を高め、アノード酸化反応は燃料極における雰囲気酸素の影響を受けることを見いだした。Ni_<0.5>Co_<0.5>Oが酸化物として安定な燃料極雰囲気では燃料電池性能が高まることから、電極表面に存在する酸素が電極反応を支配するものと考察した。また、メタンのアノード酸化反応速度はCOおよびH_2の生成速度に比例したことから、メタンの部分酸化反応に対するNi_<0.5>Co_<0.5>O粒子の活性化効果を示した。
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