研究概要 |
本研究は,いわゆるReal-time Ultrasonic Metallographyを実用化して,溶融金属内の物体の測定を可能としようとするものである.ここでは,集束超音波により空間分解能ならびにS/N比の向上を図った高温超音波計測システムを開発し,溶融金属の微視的音響特性の定量的オンライン計測に関する基礎的検討を行っている.溶融金属中で安定かつ十分な音響特性を維持しうる高分解能超音波センサーの開発を行い,このセンサーを用いた超音波スペクトロスコピーによる溶融金属の音速,減衰特性,粘性を初めとする量を評価する方法を開発中である.研究のポイントは,いかに高性能なバッファーロッドを製作できるかにある.すなわち,溶融金属中での計測に耐え,かつ計測における高い空間分解能と高S/N比を有するバッファーロッドの完成が要求される.ここでは,溶融アルミニウム,溶融マグネシウムおよび溶融スティールを評価対象とし,Al,Mgに対しては金属製バッファーロッドを,鋼に対してはセラミック製バッファーロッドを設計・製作する.10μmオーダの介在物の検出を想定して周波数帯域は5MHz〜50MHzを目標とする.本年度は,購入したワークステーションを用いて溶融金属中の超音波の伝達特性を評価することを行った.高い空間分解能と高温での使用に耐えることができるバッファーロッドを試作した.微細粒径のスティールのコアとその外部をステンレスで包んだクラッド材を超音波のロッドで,長さは1mである.バッファーロッド端部におけるSN比は5MHzの信号に対して40dB以上ある.溶融したアルミの厚さの測定ができた.さらに,高い空間分解能を持っていることを検証するための実験を行い,それを示した.
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