研究概要 |
本年度は,これまでに多孔質材に対し提案されているGursonの塑性構成式,そのTvergaardによる修正構成式,呉屋・長岐・Sowerbyにより提案された塑性構成式(以下GNS塑性構成式及びステレオロジー理論に基づくGNS塑性構成式の修正構成式(以下,ステレオロジー構成式)の4種類の構成式が,高空孔率多孔質材の塑性変形解析に如何なる程度適用しうるものであるかの数値解析的及び実験的比較検討を行った.まず,これら4種類の多孔質材塑性構成式を取り込んで塑性大変形解析有限要素法プログラムを開発し,これに基づき多孔質材の鼓形引張り試験片の単軸負荷試験解析シミュレータとブリネル硬さ試験解析シミュレータを構築した.実験においては,銅球(直径0.5mm)を母材とする多孔質材をスパーク・プラズマ焼結法(以下SPS法)により数種類の空孔率材を作製した後,機械加工により鼓形試験片に仕上げ焼鈍を施し残留応力を除去した.鼓形単軸負荷試験に供した多孔質材の空孔率は2%,10%及び20%の3種で,その寸法はいずれも長さ28mm,中央部最小径8mmそして端部最大径10mmである.鼓形試験片の単軸負荷試験に関する数値解析の結果,いずれの場合も試験片の中央部においては材料負荷試験に必要な一様な応力状態が実現できていることを示している.また,4種類の構成式の中でGurson構成式を用いた数値結果が最も硬めの応答を示しており,GNS構成式が逆に最も柔らかめの応答を示している.実験との比較において,TvergaardのGurson修正構成式及びステレオロジー構成式による数値結果が,実験の結果とよく一致する傾向を示している.また,単軸負荷試験結果がn乗則(σ=σ^*ε_n)で近似できるとし,最小部径より算出した概算真ひずみε(=InA/A_0)と真応力の関係を両対数グラフにプロットしたグラフより各空孔率に対するn値と応力係数σ^*より求めた後,これを初期空孔率の関数として外挿することから母材(中実材)のn値とσ^*値を求めうることについて検討した.
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