研究概要 |
本年度は,抵抗溶接法によって得られる多孔質材についてその強度評価を行った.抵抗溶接法は,熱影響が小さく,短時間に接合が行えるなどの特徴を有するため広く用いられている.我々の研究においては,被接合材間に金属粉末を充填し,一定荷重のもと,通電した場合に充填粉末部から発生するジュール熱によって各材料間固有である溶融点の異なる被接合材を接合する抵抗溶接法の研究がなされている.これは,接合部で金属粉末が用いられているため,十分なジュール熱の発生が得られない場合,粉末間の気泡が合体成長し,多孔質材となる.被接合材は,長さ30mm,直径8mmに加工したアルミニウム材,ステンレス材およびチタン材である.充填する金属粉末は200メッシュのニッケル粉末,シリコン粉末およびアルミニウム粉末である.アルミニウムおよびステンレス材の接合の場合,充填金属粉末にニッケルおよびシリコンの混合粉末を用いて,電流を流す時間を0.6秒,0.7秒および0.8秒に変化させてその強度評価を行った.単軸引張試験の結果,0.6秒および0.8秒では,アルミニウム被接合材や接合部で破断し,接合部での破断面には多くの気泡がみられ,いわゆる溶接欠陥により気泡の合体成長ににより破断と考えられる.0.7秒においては,引張強度は,最も高く,被接合部で破断し、接合部において溶融したアルミニウム,ニッケルの合金とその中に固溶したシリコン粉末がみられた.硬度試験結果においては,接合部の硬度はアルミニウムおよびステンレスよりも著しく高い値を示す.曲げ試験結果においては,変形は被接合材であるアルミニウムで発生し,接合部近傍には溶接欠陥がみられないことから良好な接合条件が得られたと考えれらる.アルミニウムおよびチタン材の接合の場合,これらは,溶融点がかなり異なる.充填金属粉末には,ニッケルおよびアルミニウムの混合粉末である.電流を流す時間を0.2秒,0.25秒および0.3秒に変化させてその強度評価を行った.0.25秒と設定した場合が,最も高い引張強度を示したが,アルミニウム被接合材から破断するもの,接合部から破断するものがあり,その形態は一定ではなかった.他の設定時間についても同様であり,いずれの条件においても強度のばらつきがみられ安定した接合条件は得られなかった.硬度試験結果においては,接合部の硬度は,アルミニウムより高いがチタン材の硬度までは達していない.曲げ試験においては,変形はアルミニウム材で生じ,接合部近傍での溶接欠陥はみられなかった.
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