研究概要 |
本年度は,充填金属粉末を用いた抵抗溶接法によって得られる多孔質材料について,その強度評価を行った.抵抗溶接法は,被供試材間に金属粉末を充填し,一定加圧のもと,通電した場合に最も抵抗値の大きな充填金属粉末部から局所的に発生するジュール熱を利用して,溶融温度の異なる被供試材の接合を行うものである.被供試材間に充填される金属粉末部において,使用する金属粉末材料によっては,溶融するのに十分なジュール熱の発生が得られない場合があり,その場合,粉末間の気泡が合体成長し多孔質材となることがしばしば確認されている.用いられる充填金属粉末には,アルミニウム粉末とニッケル粉末であり,供試材として,直径8mm,長さ30mmのアルミニウム棒および銅棒を用いた.加圧による粉末部の電気抵抗変化を調べたところ,金属粉末にアルミニウムを用いた場合,加圧する荷重により,抵抗値が変化する結果が得られたが,ニッケル粉末では,ほとんど変化はなかった.アルミニウム粉末は,表面が酸化膜に覆われているため,加圧によって,粉末が塑性変形を生じ,その結果,酸化膜が破れ抵抗値が変化したと考えられる.しかし,加圧により密度が上昇し,粒子間の接触面積は増大していると考える方が妥当であるので,局所的には,ニッケル粉末も抵抗値は変化していると考えられる.計測方法の更なる検討が必要であると考える.供試材にアルミニウムを,充填金属粉末にニッケル粉末を用いた場合,単軸引張試験を行った結果については,破断は,接合部ではなく,アルミニウム棒から生じており,強度の上昇がみられた.この時の接合部の観察においては,割れや空孔などの溶接欠陥は確認することはできず,良好な接合条件であったといえる.アルミニウム棒と銅棒間にアルミニウム粉末とニッケル粉末の混合粉末を用いた場合,破断は,アルミニウム棒から生じており,接合部は,前述と同様の観察結果を得た.また,硬度試験において,接合部は,銅およびアルミニウムに比べ高く,供試材は焼鈍を受けた材料と同程度の硬度を示したことから,接合部周辺は,ジュール熱発生による熱影響を少なからずも受けていることが確認された.
|