研究概要 |
軽量,剛性、超弾性と生体適合性があるNi-Ti形状記憶合金管が医療の分野で注目されている.医療検査用細管の製造の可能性を確認するため、管の引抜き加工の研究を行った.本研究では,測定しやすい面から大きい素管(φ8.0mm,t=0.5mm)を用い,次々と空引きと心金引きを行い,加工性改善のための条件を見いだすことを目的とした.具体的には,1)素管の熱処理条件,2)従来法による引抜き法の改善,3)潤滑剤の選定,4)FEMによる変形解析,5)最適な工具形状とその材料 について検討した.平成10年度研究から得られた事柄を以下に示す. (1) 本材料では他の実用金属と異なり,熱処理による線材表面の薄い酸化スケールの存在が加工に好影響を及ぼすことが判明した.その加工に対する最適熱処理条件が真空度の少し悪い状態で700〜750℃、30分保持後空冷であることを明らかにした. (2) 潤滑剤してフッ素系樹脂とステアリン酸ナトリリウム石けんを用いることにより,22%までの空引きと20%までの心金引き加工が可能であることを示した.特に心金引きは,細径化と薄肉化の管の製造ができる上,管内面の表面粗さも向上した. (3) 空引き及び心金引き加工による加工後ならびに熱処理後に形状回復することを明らかにし,その割合を示し製品寸法の予測に役立てた. (4) FEM(有限要素法)による変形機構の解析と実験結果の比較検討を行い,良い一致が得られ均一加工や引抜き限界などを推測することができた. 以上のように細径化への加工技術の基礎データが得られた.平成11年度はこれらの知見を基に,より細径化への加工技術の確立をめざす.具体的にはφ0.5程度の極細管製造技術の確立を目標にしている.
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