研究概要 |
本研究は、実用金属として最も軽量であり、省資源、生活環境の向上のために有用であるマグネシウム合金の活用のために,耐食性等に直接影響をおよぼす表面酸化皮膜の微細構造の解析と成長機構の基礎的解明を行うことを目的としている。本年度は,試料として純マグネシウムおよびAZ系のダイカストを用い、標準的な電解液に加えてふっ素を含まない電解液、クロムを含まない電解液による処理膜を、電位および電流制御した条件でアノード酸化して作製し,アルミニウムに比較して解明の遅れている表面皮膜の成長機構を明らかにするとともに、環境問題に配慮した皮膜生成の可能性を探索した。得られた結果を以下に要約して示す。なおこれらの結果は1999年10月のThe 4^<th> Asia-Pacific Interfinish Congress(Seoul,Korea)および1999年3月の表面技術協会の講演大会で発表した。 1) マグネシウムも過塩素酸ーエタノール溶液により電解研磨が可能で,鏡面が得られる。研磨による酸化皮膜は,塩素の濃縮した外層とより緻密な内層の2層構造を持つ。 2) Alでバリヤー型皮膜が生成する電解液においてマグネシウムでは多孔質型皮膜が生成する。 3) 多孔質皮膜の生成は基本的にアルミニウムに類似し,バリヤー層の生成と微細孔の発生の過程をとる。 4) 皮膜の生成電圧は必ずしもバリヤー層の厚さと比例しない。 5) ケイ酸ナトリウム溶液中での封孔処理によって,皮膜表面および多孔質中にケイ素を含む水和物層が析出し,スパッタされにくい膜に改質される。
|