研究概要 |
PdCl_2 17gをアンモニア水0.102Lに溶解した後,NH_4H_2PO_4 100kg/m^3,NH_4Cl 25kg/m^3と純水加えて1Lとした溶液を用いて,種々の電流密度でPdめっき処理を行い,20〜50A/m^2で約95%の大きな電流効率となることと,この電流密度では比較的光沢に優れるめっき膜が得られることが明らかとなった.電流密度の異なる条件で得られたPdめっき試料について,昇温脱離法によって水素分析した.めっき膜には多量の水素が固溶していることがわかった.この実験結果から,Pd厚めっき処理が困難な原因は,めっき処理の際にめっき膜中に水素が侵入し,水素脆性によってめっき膜の機械的性質が劣化することにあると推測される.そこで,めっき処理条件と水素濃度の関係を調べた.電流密度が同じであれば,Pdめっき膜中の水素濃度は膜厚に依存しないことがわかった.また,20〜200A/m^2の電流密度では,20A/m^2で最も高水素濃度(120mass-ppm)となり,それ以上の電流密度では20〜30mass-ppmとなることがわかった. めっき膜中の水素濃度を低減するめっき方法を見出すための基礎的研究として,Pdめっき膜中の水素の拡散係数と濃度を電気化学的放出法によって測定した.この結果から,(1)Pdめっき膜中の水素の拡散係数はPdバルク中のそれよりも小さいこと,(2)めっき試料を高温で熱処理することによって水素の拡散係数は大きくなって,Pdバルクでのそれと同じになること,(3)バルクよりもめっき膜の方が小さな水素の拡散係数となる主原因は,めっき膜内部の残留ひずみであることが明らかになった.
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