研究概要 |
加工界面でのナノメーターレベルでの塑性変形機構とトライボロジー条件との関係を明らかにするため理論的および実験的検討を進めた.転写加工の一手段として型に対する転写の忠実化を計るためには,(1)盛上り・充満の促進,(2)表面損傷の回避,(3)過剰な潤滑剤の排除,(4)界面からの異物の排除,(5)材料の不均質変形の抑制などが必要である.このうち(1)(2)は相反する要素があり,相対すべりが材料の塑性変形を助長するが一方表面損傷を生じる原因にもなる。ナノメータ・レベルでの忠実度をあげるためには相対すべりに頼らないで(3)を考慮して境界潤滑状態での転写型塑性加工を創出する必要がある. そのために通常,潤滑条件が影響しにくいと言われる押込み硬さ試験における圧子の形状の転写機構に注目し,楔型の剛体工具が平面状の剛塑性体に進入して行く過程(平面ひずみ)の塑性一流体潤滑機構の解析を行った.その結果推定される潤滑膜厚さは潤滑剤粘度と押込み速度に比例し,材料の流動応力に反比例する.押込み速度が1mm/sでは表面あらさをはるかに下回る10^<-5>μm程度の厚さとなる.ただし高圧粘度の上昇を考慮すると数倍から20倍,楔角を大きくしていくと85度で68度(ヴイッカース圧子の角度)の20倍の厚さになり,5nm程度になる.しかし速度を固定する限り全体として表面あらさのレベル以下であり,境界潤滑状態が保証される.また圧子の押込みの変形様式を解析すると自由表面が圧子面に接触する瞬間に伸びを発生するが接触後はDeadMetalとなり,相対すべりによる表面損傷は回避できる変形様式となっている. 以上の解析結果をもとにさらに類似の加工様式を実験的に追究するための装置(トライボ塑性変形加工機)を試作した.
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