研究概要 |
本年度は,前年度の研究成果をふまえ,フッ化物のみからなる溶融塩中でH_2ガス電解酸化反応を利用したTiの電解採取法を試みた.研究の結果,部分還元などの処理を行わなくても陰極への金属Tiの電析が可能なこと,陽極においていわゆる陽極効果を起こすことなく安定した電解が継続的に行えることが明らかとなった.電解槽電圧もかなり低く抑えることが可能であり,陰極電流効率も良好であった.ただし,電析した金属Tiは細かい粉状であり,現在までのところ良好な状態の電析物を得ることはできなかった.また,フッ化リチウムを多く含む電解浴を用いた場合には,電析物表面に付着・固化した塩の除去が困難であったが,電解浴中のフッ化リチウム割合を下げることによりかなり改善できた.このような結果から,溶融フッ化物を用いたTiの電解採取法が原理的に可能であることが確かめられ,今後,最適な電解浴組成の探索と,電析物性状の制御に関する一層の検討が必要であることがわかった. CaF_2を主体とし,TiO_2を含む混合塩に,比較的高い電圧で高電解電流を流すことにより,直接液体状態の金属Tiを得る方法についても検討した.研究の結果,この方法においても金属Tiが得られることが確かめられた.ただし,装置電源容量の関係から,完全に液体状態の金属Tiは得られず,陰極電流効率は20%程度と低かった.電解電圧,電解電流,電極間距離の影響が大きく,今後これら因子の詳しい検討が必要であることがわかった.
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