研究概要 |
ステンレス鋼の脱炭精錬では,精錬末期に生成するクロム酸化物を還元回収し,クロムの酸化ロスを低減することが重要である.本研究では,炭素含有溶鉄によるCr_2O_3の還元速度に及ぼす各種要因の影響を調べ,Crの還元挙動について速度論的に検討を行った. Cr_2O_3試料は粉末と焼結体を使用した.還元速度の測定には電気抵抗炉を用い,Ar雰囲気中で,120g(or200g)の炭素含有鉄を黒鉛あるいはアルミナるつぼ中で溶解した後.Cr_2O_3試料を溶鉄と接触させ,反応時の溶鉄組成の経時変化を調べた. 炭素含有溶鉄によるCr_2O_3の還元速度を測定した結果,Cr_2O_3の還元反応は溶鉄中のC濃度及び温度により大きく影響されることがわかった.そして,見かけの活性化エネルギーは,粉末の場合181kJ/mol,焼結体の場合156kJ/molと比較的大きいことから,界面化学反応律速の可能性があると考えられる.また,焼結体の還元速度は粉末の場合より数十倍遅いことがわかった.粉末を用いた実験では溶鉄上の粉末を撹拌するほどのガスの発生が確認されており,還元反応によって生成したCOガスはぬけやすく,次々に粉末が溶鉄と反応するため還元速度が速く,焼結体を用いた実験ではCOガスはぬけにくく.COガス気泡により焼結体と溶鉄との接触が妨げられるため還元速度が遅くなると考えられる. Cr_2O_3の還元反応モデルを構築し,速度解析を行った結果.解析結果と実測値との一致は比較的良好であり,Cr及びCの挙動は反応モデル計算によって再現された.そして,Crに関する反応は界面での化学反応とメタル層内の移動過程,Cに関する反応は界面での化学反応に支配されることがわかった.
|