研究概要 |
大気中における熱処理により,アルミナ溶射皮膜内に脈状酸化物が進し,溶射皮膜の空隙部が封孔されることが確認できた.アルミナ空隙部の壁面には金属とアルミニウムおよび酸素から成るスピネル相が形成され,また空隙部の中心はアルミニウムを含まない金属酸化物から成る,いわゆる二重構造をもつ脈状酸化物であることを明らかにした.脈状酸化物は,まず大気中の酸素の下でのスピネル相の優先形成とそれに引き続く金属酸化物の成長という過程を辿って形成されると考えられた.また,ニッケル,コバルト,鉄,クロム,チタンなどの金属を用いて封孔を試みたが,前者の3金属のみ封孔作用が認められた.これらは,スピネル相を形成する元素であり,したがって,アルミナとスピネル相を形成する金属を用いた場合のみ,自己封孔現象が現れる.以上のことにより,封孔現象にはスピネル相の形成が重要な役割を果たしているという結論を得た.
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