本研究では、半透過性含水微粒子層や食品層の放射加熱乾燥プロセスを対象系として層内の分光放射伝達モデルに立脚した熱・物質移動の理論的解析を行い、各種条件下での数値計算よりプロセスを定量的に評価し、放射加熱源、被加熱物に関する諸因子などの加熱乾燥特性への寄与・効果を理論的、実験的に明らかにすることを目的としている。その際、放射加熱源の射出特性と被加熱物の吸収特性の組み合わせの選択、複合化により加熱乾燥プロセスの高効率化の可能性を明確にすること、および加熱乾燥プロセスの最適設計に資ずる基礎指針を提案することを主なる課題とした。 まず、1次元平板系の半透過性微粒子層(非親水性)を上部より熱放射線を照射して乾燥する系について、乾燥過程を理論的に解析した。任意の放射射出特性を有する放射加熱源において試料層内の分光吸収特性を考慮した放射伝達モデルを立て、層内放射熱流束を表示した。層内非定常熱移動および水分移動式を導出し、これらを境界条件の下で数値的に解き、各条件における層内温度分布、水分分布および乾燥速度の経時変化を得た。含水ガラス粒子層について、赤外線ランプ、遠赤外線ヒータを放射加熱源として乾燥実験を行った。入射量、粒子径、厚さを変化させて、層内温度分布および層内水分量の経時変化を測定した(購入備品のインテリジエントレコーダを使用)。試料層素材の分光吸収特性の測定結果よりモデルの層内放射熱流束を算出し、放射計にて測定した全透過率と良好な対応性があることを確認した。乾燥曲線と乾燥特性曲線についての実験結果と理論解析結果の比較より、両者がかなり良好な傾向的一致を示し、理論解析手法が概ね妥当であることを認めた。さらに、とくに放射加熱源の分光射出特性と被乾燥物の分光吸収特性の組み合わせが内部加熱効果を支配して、乾燥特性に強く影響することが明らかになった。
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