研究概要 |
本研究の目的は、減圧型噴霧熱分解プロセスにより蛍光体微粒子(酸化物複合微粒子)の製造を検討することである。まず、常圧下での噴霧熱分解プロセスを用いて蛍光体微粒子を製造し、粒子のサイズおよび形態が、加熱過程などによりどのように変化するかを粒子の製造実験により検討した。対象となった材料は、Y_2O_3:EU,ZnS,Ce_<1-x>Tb_xMgAl_<11>O_<19>,Y_2SiO_5:Tb,Gd_2O_3:Euである。また、生成粒子の形態を電子顕微鏡写真から評価し、また結晶相をX線回折法から、そして蛍光特性を蛍光光度法によってそれぞれ分析し、固相法で製造された市販の蛍光体微粒子と比較、評価した。その結果、市販の粒子は粉砕プロセスを施しているので不規則な形状をしており、サイズも5〜10μm以上と大きいのに対して、噴霧熱分解法で生成した粒子は球形でサブミクロンオーダーのものが得られた。またX線回折の結果から従来の固相法が約1600℃以上という高い製造温度が必要であったのに比べて、噴霧熱分解法では約700℃〜1000℃というかなり低い温度で結晶化させることが出来ることが確認できた。また、蛍光光度の測定においても、噴霧熱分解法によって製造した粒子の方が、市販の粒子よりも高い値を示すことが分かった。 今後は常圧型噴霧熱分解プロセスで得られた結果を減圧型噴霧熱分解プロセスに応用して蛍光体微粒子を製造し、同様に粒子形態、結晶相そして蛍光特性を評価する。また、これと同時に噴霧器内での液滴発生から出発して、高温場での液滴の蒸発過程、液滴内の溶質の拡散、結晶化などのさまざまの現象を理論的に明らかにする数値計算プログラムを作成し、実験との比較および検討を行う。
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