最近、プラズマ・ディスプレー・パネル(PDP)などの多種な用途において、粒子径、粒度分布、組成が制御されたサブミクロンオーダーの蛍光体微粒子(酸化物複合微粒子)の製造プロセスの開発が重要となっている。一般に蛍光体微粒子の製造法である固相法では、高温で長時間の反応プロセスや粉砕などのやっかいな操作が必要となり、粒子への不純物の混入により蛍光体としての機能が失われることもしばしばである。本研究の目的は、約1μm以下の液滴を多量に発生させることが可能であるために工業的な応用性が極めて高い、断熱膨張を利用した減圧型の噴霧法を考案し、噴霧熱分解プロセスに応用することを検討した。本研究では、蛍光材料である複合酸化物微粒子を噴霧熱分解法で製造し、微粒子の生成速度、粒子の性状および形態が、噴霧器の操作条件、液滴のサイズ、溶液の濃度・物性、加熱過程などによりどのように変化するかを、粒子の製造実験により検討した。 複合酸化物の組成およびドーパンのプリカーサを含む溶液を調製し、これを噴霧装置より霧化させ、生成された液滴を適当な温度に設定した管状の電気炉に導入し、出口で目的の粒子を捕集した。Y_2SiO_5:Ce、Y_3Al_5O_<12>:Tb、Bao・_6Al_2O_3:Mn、Y_2O_3:Eu、Ce_<1-x>Tb_xMgAl_<11>O_<19>、Y_2SiO_5:Tb、Gd_2O_3:Eu、各蛍光体材料において、噴霧熱分解法の有用性を検討した。高い輝度および結晶性を有する材料を製造するには、従来の固相法を用いると長時間、超高温プロセスが必要だったのに対して、本研究で用いられた噴霧熱分解法を用いると、短時間(数秒間)および低い操作温度下で、純度の高い、凝集のない蛍光体材料微粒子がワンステッププロセスで製造可能なことが明らかになった。
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