研究概要 |
電気二重層を利用するクロマトグラフィーの開発のために,静電気的相互作用についての基礎的な実験的検討を行った.吸着サイトと分子形状および電荷分布との関係を調査するためにイオン交換クロマトグラフィー勾配溶出実験を行い,溶出塩濃度と規格化した勾配のプロットを作成した.このプロットから分配係数を算出し,吸着サイト数を決定する方法を考案した.決定されたサイト数は分子の電荷分布に依存するものの,吸着剤の特性にはあまり影響されなかった.(スチレンジビニルベンゼン系の多孔性吸着剤,アガロース系の多孔性吸着剤,非多孔性球状吸着剤について検討した).平衡定数についても算出したところ,吸着サイト数とともに大きくなる傾向が明らかとなった.定量的な解析は今後の検討課題である. 次に物質移動について調査した.粒子内拡散がクロマトグラフィー物質移動を支配していることはよく知られている.多孔性粒子と比較しながら対流促進が期待できる充填剤について物質移動機構を調べた.一体型クロマトグラフィーと膜クロマトグラフィーについてサイズ排除曲線を決定したところ,拡散細孔が存在しないことがわかった.パルス応答実験から吸着しない条件下ではピーク幅は流速に依存せず一定であり,拡散による物質移動抵抗が無視できることが明らかとなった.破過曲線の測定により吸着物質移動特性を検討した.静的吸着容量(平衡吸着量)は多孔性吸着剤よりかなり低いものの動的吸着容量が流速に依存しないので早い流速(短い滞留時間)では多孔性吸着剤より高くなる領域が存在することが示された(多孔性吸着剤の動的吸着量は流速とともに急激に減少する).
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