研究概要 |
平成10年度は、熱交換器の構造に関わらず、その機能(高温側流体と低温側流体との間で所定の熱交換を行う)だけに着目した動特性近似モデルの作成を行った.この近似モデルで実時間レベルの動的な挙動を近似することはできたが、劣化現象は年単位の長期間にわたる現象である.また,利用可能なデータは日毎に平均化された時系列データであることが多い. 平成11年度は、この近似モデルを日毎の動的な挙動を表現するモデルへ拡張することを試みた.しかし,利用可能なデータが時系列データであって一見動的な挙動に見えても,時系列データそのものの挙動と熱交換器自身の動特性が直接関係していない.すなわち,日毎の平均化されたデータはその日の運転条件で定常状態にあるとしたときの値であり、熱交換器の静特性から決まる値である.日毎の運転条件が異なるために時系列データとしてみたときに動的な挙動を示すにすぎない.そこで,熱交換器の静特性を制約条件として,熱交換器の劣化現象を予測するモデルの構築を試みることにした.具体的には,熱交換器の静特性を制約条件としたデータリコンシリエーションによって,時系列データの補正を行い,総括伝熱係数の予測を行った.その結果,総括伝熱係数の低下を予測することができた. 前述の方法は,熱交換器に関係する6変数(高温側流量,低温側流量,高温側入口および出口温度,低温側入口および出口温度)が測定されている場合に適用可能である.平成12年度は,それらの変数のうち,測定されていない変数が存在する場合に拡張する.
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