生成粒子の個数濃度および粒子径を制御することは非常に重要な課題となっている。しかし、液体や気体からシード粒子なしで粒子を生成するいわゆる均一核生成理論に関する研究はこれまで多くの研究者によってなされてきたが、古典的核生成理論をはじめとして、その改良型理論、さらには数値シュミレーションによる解析などのアプローチによっても、その現象の複雑さのために、現在のところ、粒子製造の現場では実用し難いのが現状である。また実験的にも、最近の進歩著しい粒子計測技術をもってしても、核生成初期段階の理論の検証に耐えられる手法は開発されていないといえる。したがって製造現場では、多くの場合、これまでの理論における考え方を定性的にとり入れながら経験的に対処しているのが実状ではないかと考えられる。そこで、従来の均一核生成初期段階における熱力学に基づいたミクロな考察から離れて、核生成およびその後の粒子生成から観測可能な生成粒子の個数濃度および粒子径に着目し、工学的な立場から液相中における均一核生成モデルを提案した。また、粒子分散系でよく用いられるセルモデルを用いた核まわりへの非定常拡散の解を用いて解析を行い、均一核生成によって生成される生成粒子個数濃度と操作条件の関係式を導出した。そして、還元法によりその妥当性について確認している。 平成10年度における研究では、その関係式中に含まれる因子の一つであるモノマーの拡散係数に着目して、そのモデルの妥当性について検討した。すなわち、溶液に増粘剤の添加することによりその粘度を変えてモノマーの拡散係数を変化させて、液相還元法による銀微粒子の生成実験を行った。その結果、モノマーの拡散係数と生成粒子個数濃度は反比例し、それに伴い生成粒子の粒子径も変化することが実験的に明らかになり、均一核生成モデルの妥当性を確かめることができた。
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