研究概要 |
天然高分子であるアルギン酸ナトリウムとカルシウムイオンのゲル化反応を利用し,コロイド粒子をゲル内に包括させ懸濁系から除去する新規な難処理懸濁質分離プロセスについて検討を加えた。 この新規なコロイド懸濁質処理プロセスは,泥水シールド工法を用いたトンネル掘削,杭打ち工事において発生する泥水の処理に実用されている。本年度は,泥水シールド工法において泥水安定剤として用いられるカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMCと略記)の本手法に対する影響を調査した。 CMCをコロイド粒子であるベントナイトに対し種々の量添加し,さらにアルギン酸ナトリウムと混合した。この混合液を塩化カルシウム水溶液(10000ppm)に滴下し,生じたコロイド包括アルギン酸カルシウムゲルの形状,圧搾脱水性を調査した。ゲルが生成するか否か,およびゲルの形態は,液滴中のアルギン酸濃度のみで定まり,CMCの濃度には無関係であることが分かった。ゲル懸濁液を重力脱水後,内径60mmのシリンダーとピストンからなる圧密試験機の中に入れ,100kPaで予圧密し,ついで1000kPaで定圧圧搾した。試料厚さの経時変化より,ゲルの圧搾速度の尺度である圧密係数を求めた。圧密係数は,ゲル中のCMCの割合が多いほど低下した。従って,迅速な泥水の処理のためには,CMCの使用をできるだけ少なくすることが望ましい。搾液の粘度は,水の粘度と同じであったため,圧搾速度の低下は,CMCの保水力に起因するものと考えられる。
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