オートクレーブを用い、ベンジルフェニルエーテルを試料として、合成硫化鉄触媒、2環系の溶媒(デカリン、テトラリン、ナフタレン)を単独、または混合して用い、水素初圧30kg・cm^2として400〜475℃に30min保持した。反応後オートクレーブを水中で急冷し室温まで降温した。ガスは微量しか生成しなかった。液状生成物はアセトンで希釈しメンブランフィルターにて触媒を除いた後、GS/MSとGCによって生成物の同定と定量を行った。何れの反応においても、ベンジルフェニールエーテルの転化率は100%であった。単独溶媒を用いた反応では、反応温度にかかわらずデカリン溶媒を用いた反応において、分解生成物(トルエン、フェノールと微量のベンゼン)が最も多く生成した。テトラリン、ナフタレンを溶媒に用いると、デカリンの場合に比べて溶媒とベンジル基の反応によるベンジルテトラリン、ベンジルナフタレンが生成するので、分解生成物特にトルエンの生成量が減少した。デカリン/ナフタレン(De+Na)、デカリン/テトラリン(De+Te)の混合割合を変えて同じ芳香族指数fa(全炭素数に対する芳香族炭素数の割合)の溶媒を用いて反応すると、De+Na系ではフェノールが、De+Te系ではトルエンがそれぞれ多くなった。ナフタレンが存在する系ではテトラリンの存在する系よりもベンジル基と溶媒との反応が多くなるためである。しかし、テトラリン単独溶媒とDe+Na系のfa=0.6の溶媒で比較すると、それ程大きな相違は認められない。またDe+Na系においてナフタレン量を多くすると、テトラリン単独の場合よりも分解生成物が多くなるfa値が存在することが認められた。今後はこの点について、反応前後の溶媒の組成変化、溶媒の質的指数を考慮して検討を進める予定である。
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