炭酸ジメチル(DMC)合成の製造プロセスの開発に関して、本研究では、初年度に、まず塩基触媒による炭酸エチレン-メタノール系のトランス・エステル化の実験研究を行なった。この反応は、炭酸エチレンが酸化エチレンとCO_2から安価に得られる点で注目され、マグネシアやハイドロタルサイトのような固体塩基が有効であるが、微量の水分で基質が分解し、発生CO_2によって触媒が失活する。そのため、本研究では、炭酸またはこれより僅かに強い酸のカリウム塩、すなわち、炭酸カリ、リン酸二水素カリ、酢酸カリおよび関連触媒について比較試験を行ない、所期の成果を挙げた。この経路では、トランス・エステル化で副生するエチレングリコールが蓄積するので、第2年度(平成11年度)は、エチレングリコールの酸化的カルボニル化による炭酸エチレン再生の研究を行なった。エチレングリコールに塩化銅(I)を懸濁、撹拌すると分子状酸素を吸収して銅(II)グリコキシド錯体を形成し、この銅(II)錯体は10atm程度の加圧COで還元されて炭酸エチレンを生成する。そこで、反応圧を15kg/cm^2に維持しながらO_2/CO=1/2の混合ガスを補給して連続試験を試みたところ、銅(II)が繰返し銅(I)に還元再生され、レドックス系を形成して触媒機能を発揮していることがわかった。以上の研究成果をもとに、エチレングリコールの酸化的カルボニル化による炭酸エチレンの生成と各種のアルコールとのトランスエステル化を組合わせると、エチレングリコールを循環体として任意の炭酸エステル合成プロセスへの応用展開が期待され、炭酸ジメチルに限定することなく、含酸素系の燃焼助剤として適切な引火点とすぐれたアンチノック性を具えた混合エステルの製造プロセスが考えられる。
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