NEDOL法による150t/dPP(石炭液化パイロットプラント)による研究開発は初期の目的を達成し、すでに終了したが、約30%も副生する液化残渣(CLR)の有効な利用法が確立されておらず、PPの海外における商業化の大きな妨げとなっている。そこで平成10年度よりCLRの有効利用についての研究を継続して行ってきたが、平成13年度は次のような成果を得ることができ、無事研究を終了した。 1)石炭液化残渣の水素化分解反応におけるタイヤ成分の添加効果 使用済みタイヤは日本国内において年間1億本も排出されているが、その多くが不法投棄などの未利用の状態にある。タイヤはCLRと同様に貴重な炭素資源としても捉えることもできる。CLRとタイヤのコプロセッシング反応でCLRの軽質化の進行する相乗効果が生じるが、本研究ではその効果の起因を明らかにするためにタイヤ成分の添加効果について検討した。その結果タイヤ中のゴム成分がテトラリンや気相水素からCLRへの水素移動を促すことが明らかになった。 2)CLRの水素化分解反応に及ぼす過酸化水素による酸化前処理効果 CLR中に存在するピロータイト(磁硫鉄鉱)は50℃、6時間のH_2O_2前処理によって酸化され、その結果生じた硫酸鉄(II)がフェントン試薬として働いた。第一鉄イオンとH_2O_2から生成したOHラジカルによってCLR中の多環芳香族クラスターの酸化が起こった。結果としてこのように前処理したCLRの水素化分解反応では、オイル分収率の増加やアスファルテン分収率の減少のような軽質化が未処理CLRの水素化分解反応の結果に比較して観測された。
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