研究概要 |
本研究は化学的に安定で反応性に乏しいメタンやエタン、プロパンなどのアルカン小分子を活性化し、利用価値の大きな長鎖の炭化水素や芳香族化合物を選択的に合成できる触媒の開発とその作用機構の解明を目的とした。本年度は常圧流通式反応装置を作成し、担持VIII族金属触媒ならびにモリブデン炭化物触媒上におけるメタンの改質反応の検討を行った。モリブデン炭化物触媒上においてCH_4カップリング反応を行ったところ、転化率約10〜20%、約60%の高選択率でベンゼンが生成することを見出した。モリブデン炭化物はVIII族金属に類似した電子的構造を有していることから、担持VIII族金属触媒もモリブデン炭化物同様CH_4カップリング反応に対して高活性を示す可能性がある。担持VIII族金属触媒として、SiO_2担持のCo、Ni、Ru、Rh、Pd、Os、IrおよびPt触媒を調製し、これらのCH_4カップリング反応に対する触媒活性を検討した。その結果、Rh、IrおよびPt触媒上に於いてベンゼンの生成を確認できたが、いずれの触媒においても活性劣化が激しく反応条件等のさらなる検討が必要と考えられる。 また、閉鎖循環式反応装置を用いてRh/SiO_2触媒によるCH_4-CO反応を行い、Rh粒子径のベンゼン生成活性への影響を調べたところ、Rh金属粒子径の減少に従ってベンゼン生成のTOFが顕著に増大することを見出した。これはRh粒子径の減少によって金属表面の欠陥サイトが増大し、CH_4解離能が向上することによって解離COへの水素供給速度が増大したためと考えられる。また、Rh/SiO_2触媒への希土類酸化物の添加効果を検討した結果、Nd_2O_3を添加することによってベンゼン生成活性が10倍以上増大することを見出した。また、最適なNd_2O_3添加量の検討も行いRh/Nd_2,O_3比が1/16の組成比で最大のベンゼン生成速度を示すことを見出した。
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