前年度において触媒性能予測システムのプロトタイプを開発する際に、ニューラルネットワークによって触媒性能実験の結果を学習させる際の問題点が明らかになった。本年度は、触媒性能予測システムの予測精度のいっそうの向上を目的として以下の研究を行った。 ●ニューラルネットワーク出力層における関数値正規化を定量的に決定 ●遺伝的アルゴリズムを使ってネットワーク構成を自律的に最適化 以上の2項目をバックプロパゲーション(BP)・ネットワークとRBF(Radial Basis Function)ネットワークの両方について検討した。その結果、学習データの最大値とニューラルネットワークの出力層からの出力値の最大値の間には、後者を前者の2倍程度に設定する必要があることが明らかになった。従来この問題は重要視されていなかったが、本研究により、不適切な関係が設定されると、学習回数を増加してもネットワークの学習が不十分となることが実験的に確認された。また、この結論は、BPおよびRBFの両ニューラルネットワークによってほぼ同一であることも確認した。これまで、ニューラルネットワークの構成、特に中間層のユニット数の決定は、ネットワーク設計者の経験に基づいていたが、一般的な規則は存在しなかった。本研究では、遺伝的アルゴリズムを適用することによってこの問題の解決を検討した。遺伝的アルゴリズムの染色体の適用法や適合度関数の形式を実験的に検討することによって、本方法が中間層ユニット数の決定に有効であることを確認した。一般的には、入力層ユニット数、すなわち操作変数の数の3倍程度の中間層ユニット数から出発して最適と思われる中間層ユニット数を決定することになる。ただし、計算の性格上、計算時間が非常に長くなり、実際の適用に当たっては、決められた問題に対してあらかじめ遺伝的アルゴリズムによってその構成を決定しておき、実際の学習や予測は遺伝的アルゴリズムを組み込まないシステムで行うという方法も確立した。
|