研究概要 |
平成10年度は既に、細胞の免疫複合体の除去能及び免疫寛容能を支配する遺伝子を腎糸球体上皮細胞に導入した。また、細胞不死化に効果する遺伝子E6,E7を用い、腎糸球体メサンギウム細胞の不死化を行った。 平成11年度は腎糸球体上皮細胞及びメサンギウム細胞の生体外の共培養および細胞間相互作用を検討した。共培養の最適培地のみならず、細胞外マトリクスであるECM(excellular matrix)、コラーゲンゲルも用い、細胞培養の最適条件を検討した。また生体内では、メサンギウム細胞と上皮細胞が基底膜の両側に存在するため、アスコルビン酸添加したコラーゲン溶液中にガーゼを浸漬し、UV照射によりゲルを架橋し、形成したガーゼゲルの両側に二種類の細胞をそれぞれ植え付けて培養した。 結果として、ECMは腎糸球体上皮細胞を蜂巣状を引き起こし、メサンギウム細胞の伸縮性を抑制した。一方、コラーゲンゲルは上皮細胞を集落的に増殖させたが、アスコルビン酸をさらに添加すると、両細胞が順調に増殖した。ガーゼゲルの両側に細胞を共培養した結果、上皮細胞がシート様に増殖したが、メサンギウム細胞がガーゼの枝に付着増殖し、さらに凝集した。FDA(生細胞を判定する試薬)とPI(死細胞を判定する試薬)の染色により、細胞の生存が確認された。これらの結果により、ガーゼが栄養分及び酸素などをトランスポートしたことを示唆した。また、ガーゼゲルは細胞共培養の軟足場として使われることが明らかとなった。 以上の結果を平成11年度の日本生物工学会、日本化学工学会、日本培養組織学会、第5回アジア太平洋生物工学会および第9回欧州バイオテクノロジー学会に発表した。
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