研究概要 |
本年度は,好熱性シアノバクテリアSynechococcus sp.MA19株およびゼニゴケカルスMarchantia polymorpha HYA-2F株を対象として,光混合栄養条件下で利用しうる有機炭素源の探索や増殖特性に及ぼす培養条件の影響などを検討した. 光照射下において,種々の糖を含む培地中でシアノバクテリアMA19株を培養したところ,シュークロース培地中で著しく細胞増殖が促進され,本株がシュークロースを資化できることが分かった.さらに,培地中のリン酸イオン濃度が,ポリヒドロキシ酪酸(PHB)の生産性に大きな影響を及ぼすことを見い出した.培地中へのリン酸塩の添加を制御し,細胞内リン含有量を0.08mmol/g-cellsに維持したとき,細胞内で蓄積されるPHBの含有量が顕著に向上し,最大で0.62g-PHB/g-cellsに達した. 一方,外部照射型バイオリアクターによるゼニゴケ細胞HYA-2F株の光混合栄養培養(有機炭素源:グルコース)を実施した.その結果,培養初期において培養槽内の平均光強度が比較的高い範囲(平均光強度:8〜24W/m^2)では,細胞による二酸化炭素の排出が極めて低レベルに抑制され,他方,細胞の対糖収率は,1.2g-cells/g-glucoseと非常に大きな値を示した.従属栄養培養における細胞の対糖収率は,通常0.5g-cells/g-glucose前後であることから,HYA-2F株の光混合栄養培養においては,有機炭素源としてグルコースの効率的な利用と同時に,その代謝過程で排出されるガス状基質としての二酸化炭素も細胞内へ取り込まれて,細胞成分として有効にトラップしうることが示された.
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