研究概要 |
本年度は,好熱性シアノバクテリア Synechococcus sp.MA19株およびゼニゴケカルス Marchantia polymorphaHYA-2F株を対象として,光混合栄養条件下における有機炭素源およびエネルギー利用特性を検討した. シアノバクテリアMA19株を,初期スクロース濃度5kg/m^3,入射光強度0〜67W/m^2の範囲で培養した.入射光強度45W/m^3までは,炭素回収率R_Xは,入射光強度の上昇とともに向上し,他方,二酸化炭素放出率R_Eは減少した.入射光強度67W/m^3のとき,炭素回収率R_X=1.1および二酸化炭素放出率R_E=-0.18となり,細胞によるCO_2放出は実質上ゼロ(空気中CO_2の取り込みによりR_Eは負の値)となることが分かった.従来報告されている光混合栄養細胞におけるR_X値は0.7〜0.8であり,MA19株では,その代謝過程で排出されるガス状基質としてのCO_2も細胞内へ取り込まれ,炭素源を効率的にバイオマスおよびPHBに変換しうることが示された. 一方,外部照射型バイオリアクターによるゼニゴケ細胞HYA-2F株の光混合栄養培養(有機炭素源:グルコース)を実施した.その結果,細胞による吸収光エネルギー量をE_C=350W/kgに制御することにより,培養期間を通じてCO_2の排出のない培養が達成された.さらに,光混合栄養における代謝フラックス解析により,細胞内における光合成と呼吸作用によるエネルギー変換効率を求めた.その結果,光および有機炭素源由来のエネルギーからATPへの変換効率は,最大で約10%であることが分かった.また,ATPへの変換効率を考慮した光照射制御を行うことにより,光強度を一定とした培養に比べ,供給エネルギー基準の細胞収率を著しく向上できることが示された.
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