リン脂質代謝酵素ホスホリパーゼD(PLD)は、生体内反応では情報関連酵素としてその活性化機構が注目されており、また試験管内反応においては合成の新規反応経路としての期待を浴びている。本研究では、高いリン酸基転移反応活性を有する放線菌Streptoverticillium cinnamoneum由来の分泌型と膜局所型PLDに関する活性特性および遺伝子配列の同定を行い以下の結果を得た。 (1)可溶性PLD 培養上清液より種々のカラムクロマトグラフィーにて精製酵素を取得し、酵素活性特性を検討した。本酵素はアルミニウムイオンにて活性化されることが明らかとなった。また、精製酵素から数個のペプチドを取得し、アミノ酸配列の解析を行った結果、触媒モチーフの存在が明らかとなり、しかも従来にない新しいアミノ酸配列の存在も同定を有していることを示した。 (2)膜局在型PLD 膜内に局在している膜タンパク質を可溶化後、クロマト分離にて得た精製酵素の基質特異性、物理特異性など、を検討した。膜局在型PLDは、フォスファチジルコリン(PC)に触媒能を示さずフォスファチジルエタノールアミン(PE)に高い反応性を示すことが明らかとなった。また、分子量分析の結果、約35-40kDaの分子量を有し、可溶性PLDとは触媒機構および立体構造において異なる酵素であることを示した。
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