セルロースに特異的に結合し凝集させる能力を持つ、Geotrichum属酵母M111株菌体の培養特性と、真空乾燥および噴霧乾燥による細胞表層タンパク質のセルロース吸着特性を検討し、以下の結果を得た。 (1)酵母M111株を回分培養器で培養し、培養温度、培養至適pH、攪拌速度、空気吹き込み速度などを検討した。至適培養温度は27℃、至適pHは5であった。M111菌体の増殖速度は吹込空気流量にはほとんど依存せず、攪拌回転速度に顕著に依存した。培養速度に与える攪拌回転数の影響はVerlhastの自触媒型増殖速度式で良く表すことができた。 (2)酵母M111菌体のセルロース凝集活性を、ミクロチューブを用いて簡便に測定する手法を開発し、種々の温度におけるセルロース凝集活性を測定した。M111菌体のセルロース凝集活性は50℃以下では変化しなかったが、60℃以上では活性の低下が観測され、1次熱失活速度式で良好に相関された。熱失活の活性化エネルギーは213kJ/molであった。 (3)培養静止期の菌体を遠心機で20分間遠心し、クエン酸緩衝液で2回洗浄遠心した。集菌した菌体をクエン酸緩衝液で菌体濃度を調節し、80℃で真空乾燥した。所定時間ごとに菌体を採取し、セルロース凝集活性をミクロチューブ法によって測定した。真空乾燥による凝集活性の低下はほとんど観測されなかた。 (4)湿潤菌体に蒸留水を加え全量を500mlとした菌体水溶液を、回転円盤式噴霧乾燥装置を用いて、入口温度150℃、出口温度79℃、ディスク回転数30000rpmで噴霧乾燥した。得られた乾燥菌体のセルロース凝集活性をミクロチューブ法で測定した。セルロース凝集活性は乾燥前のものと比較して約80%に低下した。噴霧乾燥による凝集活性の低下は、噴霧時の回転円盤の剪断力に起因すると推測された。
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