本研究は、極微量元素の多元素同時濃縮法に関し、3つの新規な濃縮系について検討して、以下の幾つかの新しい知見を得ることができた。 (1)水溶性キレート試薬の中でその末端にプロピル基を有する試薬は、生成する金属キレートが水溶性であるにもかかわらずC_<18>などの疎水性基質に捕集されることを見いだし、微量元素の多元素同時計測のための分離濃縮法へと発展させた。すなわち、ppmレべル濃度で濃縮回収率が良好な緒条件を明らかにして、目的元素がngレべルの極微量域においても回収率、分離特性が低下することなく、ppb〜pptレべルの金属イオンの多成分濃縮法へと展開させる新規な知見を得た。 (2)自動車触媒を排出起源とする可溶性白金属塩が環境汚染問題として緊急の課題となっているので、申請者らが見いだした分離濃縮系の調製法を用いて高分量アンモニウム塩であるAliquat336をC_<18>シリカへ添着させた樹脂を創製して、白金属元素の濃縮法へと展開させることができた。本分離濃縮法を、粉塵、地質試料中の極微量白金属元素の精密分析法へ応用して、その有用性を明らかにした。 (3)疎水性基質であるシリカゲルにキレート官能基のエチレンジアミン3酢酸基を化学修飾固定した樹脂を調製することを試み、簡便且つ信頼性のある合成法を明らかにした。本樹脂を用いて、極微量の目的多成分の濃縮特性に関して詳細な検討を行い、主成分マトリックス(妨害元素)からの分離特性を明らかにして、ppb〜pptレべルの金属イオンの多成分濃縮法へと発展させることができた。
|