研究概要 |
本研究は,近年の貧血症の増加に伴って重要な課題とされている全血中のヘモグロビン濃度の迅速・簡便な計測を目的とし,初年度は下記の方式のドロップテスト法を発案し,これを具体化するために基礎的な研究を行った. 本方式では,特定の色素が水溶液ドロップからC18修飾(ODS)シリカ薄相プレート上へ,リング状の濃度勾配をもって液滴円周部へ高濃度に分配する現象を利用する.操作は,全血2μlを色素水溶液で30倍希釈し,その50μlをODSプレート上へ滴下し,静置後,暗所でUVランプ照射下,黒色を呈する液滴内を肉眼で観察する.テスト結果は,底部に蛍光リングが透視された場合,貧血試料と判定する.この方式を実現するためにリング形成色素の探索研究を行った結果,蛍光色素ローダミンBが優れていることを知った.肉眼の識別感度を確保するためには,色素がリング状に分配する現象が不可欠である.ODSプレートへ分配した蛍光色素ローダミンBに対して,液滴中のヘモグロビンがその濃度に応じて,UV光による励起ならびに蛍光の透過を遮蔽する結果,正常/貧血のヘモグロビン濃度の少差が増幅され,肉眼識別を可能とする.なお,水溶性タンパク質であるヘモグロビンはODSプレートへ分配されない. 今後の計画としては,色素のリング状分配の機構について詳細な研究を行うとともに,応用面では,本テスト法を成人女性の正常値である120gL^<-1>と貧血の場合の100gL^<-1>との識別へ適用し,貧血診断のためのスクリーニング法としての確立を行う.
|