研究概要 |
(1)これまでに構築したオプトセンシング流れ分析システムの適正化、高度化をさらに進めた。特に、これまでのセル室の形状では導入したミクロ粒子の幾何学的配置の再現性に問題があることが判明したので、取り敢えず入射光側のファイバーをセル上方から垂直に設置することで再現性の改善を図った。 (2)バソクプロインスルフォン酸(BPS)を陰イオン交換樹脂(Q Sepharose Fast Flow、平均粒子径90μm)表面に吸着させた機能性ミクロ粒子の調製とそれを用いるオプトセンシング流れ分析法による極微量鉄の定量法を確立した。 調製したミクロ粒子のFe(III)に対する錯化容量は3.9x10^<-5> molFe/mlであり、通常の使用に際しての配位子の脱離は観察されなかった。50μlのBPS担持ミクロ粒子懸濁液をセルに送った場合、セル中に捕捉充填されたミクロ粒子はセルの約50%を占める。ミクロ粒子の充填量が増えるとともに透過光量が減少し、錯生成に基づく微小な吸光度変化の測定の際に不利となるので、ここでは50μlを充填した。ミクロ粒子固相で生成した錯体の吸収スペクトルは均一液相でのそれとほぼ同じでλmaxは540nmであった。100μlのサンプル(Fe標準溶液)を注入した場合の検出限界は約0.005ppmFeであったが、サンプル注入量を200μlに増やすことでさらに感度は増大することが確かめられた。これは均一液相でBPSによる方法の約5〜10倍の感度である。すなわち、ミクロ粒子固相表面での一種の濃縮効果によるものである。流速を2μl/secから6μl/secに上げるとピークの吸光度がやや低下するが、これは反応時間の短縮によるものと考えられる。検量線は0〜0.2ppmの範囲で直線となり、10倍量のV,As,Ni,Mn,Mo,Pb,Cd,Al,Ca,Mg,Cr(VI),の共存は影響しなかった。 本研究では流れシステム内へのミクロ粒子の供給と排出を自動的に、しかも分析の都度行うことができるので、常に新しいミクロ粒子を測定に用いることができ、また、ミクロ粒子上での反応をその場測定できるという大きな特徴がある。
|